2008年 08月 15日
ホントはウザい平安朝の恋愛 ~『平中物語』 あるストーカーのつきまといの日々~
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童女から老女まであらゆる女とやりまくる平安朝の色好み達をこれまで何度かネタにしてきたわけですが、そこで取り上げた『伊勢物語』や『源氏物語』は、物語的に理想化された劇的な人物を描いており、色好みの現実的な姿を伝えてはおりません。
そこで今回は、色好みの理想化されざる姿を取り上げてみましょう。
扱うのは「さしたる大事も起らぬこまごました日常性の中で、女にものいいかける歌がいかにして生まれるのかを書き残そうとした」(新編日本古典文学全集12巻 解説 544頁)とか言われ、理想化されざる色好みのある意味平々凡々たる営みを描いた好例となっている『平中物語』。
『平中物語』の主人公である平中こと平貞文(?~923)は、一応、高名な色好みで、在原業平と並び称されているくらいの人物です。つまり、それなりにモテモテだったはずの人なのですが、そのわりに振られたりへま踏んだりすることも多く、けっこう間抜けな姿をさらしてくれます。
(以下、原文は 歌の前後に改行を加えて新編日本古典文学全集12巻より引用)
二十五段においては、
平中は道で女に言い寄ったものの、うまくは行かず、ついに女に追い払われるのですが、
<訳>
「もう、さっさとどこかに行って」と言ったのに、この女の帰っていく家を探り当ててやろうとか思って、男が立ち去らないので、女は家を見せるわけにはいかないと、非常に迷惑に思った。
なかなか良い感じにストーカーな姿を披露してくれてます。ちなみに平中、去り際に童を残して、女の車の入っていく家を調べさせています。
さらに、三十七段では
<訳>
また、この男のことだが、同じ家に一つ屋根の下、従姉妹たちがいて、そろって美人だった。昔は、見目良くは思えなかったが、非常に美しく育ってきたので、あの男も、興味を向けるようになり、何の機会に言い寄ろうかと考えていたところ、若菰(コモ 沼に生える植物でムシロになり、若芽は食用にもなる)が置いてあるのを、女がさわっているのを見て詠いかけた、
沼水に菰の芽目に見え萌え出すように育った綺麗なお前に萌えた
女は返して、
まるで沼、目つきに籠もった下心、濁った浅さが目に見えウザい
なかなか口が回るではないか。
なんというか、従姉妹相手に「うとまるる」と言ってウザがられ切り捨てられてるあたり、妹相手にラブラブしてた、業平との格の違いを見せつけられた感じです。
それにしても、色好みというのは、理想化された姿でもたいがいキモい変態さんでしたが、理想化されていないと、その上、ウザいです。
そういえば『竹取物語』に出てきた、色好み達も、かぐや姫の姿をのぞき見ようと、人んちの周りをうろついて垣根に穴あけるウザいクソ野郎どもでした。まあ、空から降ってきた人間じゃない美少女が見たいって気持ちは分からないでもないですが…。
とまあこんな感じに、平安朝や平安物語の雅な色好みとは、冷静な目で見れば、キモくてウザい変態ストーカーにすぎないわけです。
平安朝の恋って実にみやびですね。
参考資料
『新編 日本古典文学全集12 竹取物語 伊勢物語 大和物語 平中物語』片桐洋一/福井貞助/高橋正治/清水好子訳注 小学館
中村真一郎著『色好みの構造-王朝文化の深層-』岩波新書
『スーパー・ニッポニカ Professional』小学館
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千年のサブカルチャー『源氏物語』への平安人の非難 源氏でキモオタがオナるから作者も読者も地獄に堕ちろ
れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―その2
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/genji.html
日本民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html
源氏物語を読む
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/1998/980515.html
そこで今回は、色好みの理想化されざる姿を取り上げてみましょう。
扱うのは「さしたる大事も起らぬこまごました日常性の中で、女にものいいかける歌がいかにして生まれるのかを書き残そうとした」(新編日本古典文学全集12巻 解説 544頁)とか言われ、理想化されざる色好みのある意味平々凡々たる営みを描いた好例となっている『平中物語』。
『平中物語』の主人公である平中こと平貞文(?~923)は、一応、高名な色好みで、在原業平と並び称されているくらいの人物です。つまり、それなりにモテモテだったはずの人なのですが、そのわりに振られたりへま踏んだりすることも多く、けっこう間抜けな姿をさらしてくれます。
(以下、原文は 歌の前後に改行を加えて新編日本古典文学全集12巻より引用)
二十五段においては、
平中は道で女に言い寄ったものの、うまくは行かず、ついに女に追い払われるのですが、
「いまは、はや、おはせむところへおはしね」といえば、この女の入らむところを見むとて、男いかざりければ、女、家を見せじと思ひて、せちに怨じけり。
<訳>
「もう、さっさとどこかに行って」と言ったのに、この女の帰っていく家を探り当ててやろうとか思って、男が立ち去らないので、女は家を見せるわけにはいかないと、非常に迷惑に思った。
なかなか良い感じにストーカーな姿を披露してくれてます。ちなみに平中、去り際に童を残して、女の車の入っていく家を調べさせています。
さらに、三十七段では
また、この男、ひとつをの家に、いとこどもぞ、よき女どもにてある。はじめは、よろしとも見ざりけるを、いとよく生ひいでにければ、かの男、心をつけて、いかならむをりにものをいはむと思ふに、若菰のあるを、女、取りまさぐりけるを見て、
沼水に君は生ひねど刈る菰のめに見す見すも生ひまさるかな
女、返し、
刈る菰の目に見る見るぞうとまるる心あさかの沼に見ゆれば
とはいふものか。
<訳>
また、この男のことだが、同じ家に一つ屋根の下、従姉妹たちがいて、そろって美人だった。昔は、見目良くは思えなかったが、非常に美しく育ってきたので、あの男も、興味を向けるようになり、何の機会に言い寄ろうかと考えていたところ、若菰(コモ 沼に生える植物でムシロになり、若芽は食用にもなる)が置いてあるのを、女がさわっているのを見て詠いかけた、
沼水に菰の芽目に見え萌え出すように育った綺麗なお前に萌えた
女は返して、
まるで沼、目つきに籠もった下心、濁った浅さが目に見えウザい
なかなか口が回るではないか。
なんというか、従姉妹相手に「うとまるる」と言ってウザがられ切り捨てられてるあたり、妹相手にラブラブしてた、業平との格の違いを見せつけられた感じです。
それにしても、色好みというのは、理想化された姿でもたいがいキモい変態さんでしたが、理想化されていないと、その上、ウザいです。
そういえば『竹取物語』に出てきた、色好み達も、かぐや姫の姿をのぞき見ようと、人んちの周りをうろついて垣根に穴あけるウザいクソ野郎どもでした。まあ、空から降ってきた人間じゃない美少女が見たいって気持ちは分からないでもないですが…。
とまあこんな感じに、平安朝や平安物語の雅な色好みとは、冷静な目で見れば、キモくてウザい変態ストーカーにすぎないわけです。
平安朝の恋って実にみやびですね。
参考資料
『新編 日本古典文学全集12 竹取物語 伊勢物語 大和物語 平中物語』片桐洋一/福井貞助/高橋正治/清水好子訳注 小学館
中村真一郎著『色好みの構造-王朝文化の深層-』岩波新書
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http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/genji.html
日本民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html
源氏物語を読む
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/1998/980515.html
by trushbasket
| 2008-08-15 01:13
| My(山田昌弘)








