2008年 11月 16日
19世紀ヨーロッパのプロ市民 ~自分たちの存在意義を守るため奴隷制を推奨した反奴隷制団体の話~
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19世紀後半のヨーロッパ、そこではアフリカでイスラム教徒が伝統的に行ってきた大々的な黒人奴隷貿易が、大きな醜聞となっていました。
そしてこのような状況下、人道を重んじるヨーロッパのお偉い白人様がたは、悪いイスラム教徒をやっつけるために正義の闘いに立ち上がります。
そういうわけで、この時代、ロンドンにある反奴隷制協会と連絡を取りつつアフリカ奥地へと突き進む白人探検家諸氏を先頭に、ヨーロッパ勢力が武力づくでアフリカ大陸へと大々的に浸透、アフリカを植民地化、もとい文明化していくことになります。悪い奴隷狩人を討伐して黒人に文明と幸福をもたらすのは、偉大な白人様に課された慈悲深き責務というわけです。
それにしても、西ヨーロッパ人が奴隷貿易と奴隷制を廃止したのは、ここからほんのちょっと前の19世紀の前半だったわけですが、
直前まで続いていた自分たちの悪行をあっさり棚に上げて、他国の同種の行為を十字軍気取りで討伐にかかるヨーロッパ白人の図々しさには軽蔑を禁じ得ません、
もとい、
世界の人権状況改善のため、短期間のうちに次々迅速に手を打ち続けるヨーロッパ白人の立派な姿には尊敬の念を抱かずにはいられませんね。
ちなみにこの正義の奴隷商人討伐戦に伴う損害は、
いくつかの黒人共同体が完全に破壊された程度の些細なもので、
黒人達はイスラム奴隷商人の害悪から癒されるという恩恵を受けた代償としては、「ヨーロッパの征服によって十倍のひどい破滅を被る」だけであったそうです(W・S・ブラント著『ハルツームのゴードン -同時代人の証言-』栗田禎子訳 リブロポート 81頁)。
実に白人様の行いは素晴らしい。
で、人権を掲げる文明時代の住人たる我々としましては、未来へ向けて人道と文明と人権を益々一層高めていくために、この白人様の慈善活動の内容を、お手本・教材として参考にするため、もう少し詳しく見てみるのも有益なのではないかと思います。
そういうわけで、反奴隷交易の諸協会が奴隷狩りの社会的原因であった地中海イスラム世界の奴隷制と如何に向き合っていったかを、その当時を振り返った前掲の同時代人の著作を通じて、見てみることにしましょう。
どうです、感動モノの素晴らしい活動ですよね。
現代でも、公益活動・慈善活動を隠れ蓑に自分たちの利益や権勢ばかりを追求したり、人権弾圧勢力に力添えしながら人権活動家気取りの物言いをする職業的な運動勢力がいて、プロ市民などという蔑称で呼ばれているとか言いますが、そういった悩みは昔から変わらず存在したということです。
というわけで、恥ずかしげもなく慈善だ人権だ、その他の耳障りの良いお題目だを掲げられるような人間が、しばしば厚顔無恥な外道であるという事態は、歴史的に見て、避けることが不可能であるようです。
ですから、そういった小綺麗なお題目を掲げる人間に対しては、それが本物かどうか慎重に良く見極めなければならない。
歴史はその様な教訓を残しているようですね。
とりわけ白人様の騙る、もとい語る、慈善・公益・人権などには十分に気を付けなければいけませんね。
参考資料
W・S・ブラント著『ハルツームのゴードン -同時代人の証言-』栗田禎子訳 リブロポート
宮本正興/松田素二編『新書アフリカ史』講談社現代新書
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イスラム民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020614b.html
西欧近代勢力との接触でイスラーム世界が苦しむ様について少し触れられています
引用書が同時代人の著作である旨加筆(11月18日)
リンクを変更(2010年12月8日)
そしてこのような状況下、人道を重んじるヨーロッパのお偉い白人様がたは、悪いイスラム教徒をやっつけるために正義の闘いに立ち上がります。
そういうわけで、この時代、ロンドンにある反奴隷制協会と連絡を取りつつアフリカ奥地へと突き進む白人探検家諸氏を先頭に、ヨーロッパ勢力が武力づくでアフリカ大陸へと大々的に浸透、アフリカを植民地化、もとい文明化していくことになります。悪い奴隷狩人を討伐して黒人に文明と幸福をもたらすのは、偉大な白人様に課された慈悲深き責務というわけです。
それにしても、西ヨーロッパ人が奴隷貿易と奴隷制を廃止したのは、ここからほんのちょっと前の19世紀の前半だったわけですが、
直前まで続いていた自分たちの悪行をあっさり棚に上げて、他国の同種の行為を十字軍気取りで討伐にかかるヨーロッパ白人の図々しさには軽蔑を禁じ得ません、
もとい、
世界の人権状況改善のため、短期間のうちに次々迅速に手を打ち続けるヨーロッパ白人の立派な姿には尊敬の念を抱かずにはいられませんね。
ちなみにこの正義の奴隷商人討伐戦に伴う損害は、
いくつかの黒人共同体が完全に破壊された程度の些細なもので、
黒人達はイスラム奴隷商人の害悪から癒されるという恩恵を受けた代償としては、「ヨーロッパの征服によって十倍のひどい破滅を被る」だけであったそうです(W・S・ブラント著『ハルツームのゴードン -同時代人の証言-』栗田禎子訳 リブロポート 81頁)。
実に白人様の行いは素晴らしい。
で、人権を掲げる文明時代の住人たる我々としましては、未来へ向けて人道と文明と人権を益々一層高めていくために、この白人様の慈善活動の内容を、お手本・教材として参考にするため、もう少し詳しく見てみるのも有益なのではないかと思います。
そういうわけで、反奴隷交易の諸協会が奴隷狩りの社会的原因であった地中海イスラム世界の奴隷制と如何に向き合っていったかを、その当時を振り返った前掲の同時代人の著作を通じて、見てみることにしましょう。
……。奴隷狩人たちへの武力行使に代わるべき政策は、地中海の回教国における回教改革を奨励し、合法的制度としての奴隷制の廃止を確立し、これによって需要を内部から断つ方法であった。この政策はしかし決して反奴隷交易諸協会に受けのいいものではなかった。我々のプロの博愛家諸氏は、キツネ狩りの飼い主がキツネを廃止するつもりがないのと同様、奴隷制を完全に廃止するつもりなど毛頭なかったのである。これらの諸団体は回教の改革者たちに水をさし、奴隷制はコーランで認められているのだから、ムスリムである改革者がこれを非難する正当性はないということを思い出させるのが常であった。……
……なるほど、もし奴隷制と奴隷取引が本当にナイルから姿を消せば、彼らの俸給は止まってしまうというわけだった。……
(前掲書 81~82頁)
どうです、感動モノの素晴らしい活動ですよね。
現代でも、公益活動・慈善活動を隠れ蓑に自分たちの利益や権勢ばかりを追求したり、人権弾圧勢力に力添えしながら人権活動家気取りの物言いをする職業的な運動勢力がいて、プロ市民などという蔑称で呼ばれているとか言いますが、そういった悩みは昔から変わらず存在したということです。
というわけで、恥ずかしげもなく慈善だ人権だ、その他の耳障りの良いお題目だを掲げられるような人間が、しばしば厚顔無恥な外道であるという事態は、歴史的に見て、避けることが不可能であるようです。
ですから、そういった小綺麗なお題目を掲げる人間に対しては、それが本物かどうか慎重に良く見極めなければならない。
歴史はその様な教訓を残しているようですね。
とりわけ白人様の騙る、もとい語る、慈善・公益・人権などには十分に気を付けなければいけませんね。
参考資料
W・S・ブラント著『ハルツームのゴードン -同時代人の証言-』栗田禎子訳 リブロポート
宮本正興/松田素二編『新書アフリカ史』講談社現代新書
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世の中たまには喜んで奴隷の境遇に身を置く人がいます
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西欧近代勢力との接触でイスラーム世界が苦しむ様について少し触れられています
引用書が同時代人の著作である旨加筆(11月18日)
リンクを変更(2010年12月8日)
by trushbasket
| 2008-11-16 01:09
| My(山田昌弘)








