異なる鉄道会社同士の相互乗り入れ。乗客にとっては乗り換えなしで移動できる便利さがありますし、鉄道ファンにとってもワクワクさせられる要素ではないかと思います。
そういえば。関東の大手私鉄では珍しく、相互直通運転がなかった相模鉄道。しかし2019年11月30日からJR東日本と乗り入れたそうで。
関連サイト:
「日本経済新聞」(https://www.nikkei.com)より
「相鉄・JR、30日から直通運転 新宿・埼玉方面に接続」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52720030Y9A121C1L82000/?n_cid=DSREA001)
「相鉄乗って東京都心へ JR東と相互直通運転スタート」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52815840Q9A131C1CE0000/)
さて。大手私鉄とは、日本民営鉄道協会によれば、東武・西武・京成・京王・小田急・東急・京急・東京メトロ・相鉄・名鉄・近鉄・南海・京阪・阪急・阪神・西鉄の16社を指すそうですね。
関連サイト:
「日本民営鉄道協会」(https://www.mintetsu.or.jp)より
「大手民鉄データブック」(https://www.mintetsu.or.jp/activity/databook/)
そこで、今回はこれら大手私鉄の相互直通運転に関して列挙してみます。
基本は上記記事や日本民営鉄道協会のサイトおよび各鉄道会社公式サイト、更に下記サイトを参照しています。
関連サイト:
「鉄道雑学研究所 北広島支所」(http://hacchi-no-he.net)
見落としがあれば、ご教示願います。なお、鉄道会社名のリンクは、各社の公式サイトです。
東武鉄道
東上線:和光駅で東京メトロ有楽町線・副都心線と乗り入れ
※一部は副都心線を経て更に東急東横線及び横浜高速鉄道線とも直通。
伊勢崎線・日光線:北千住駅で東京メトロ日比谷線と乗り入れ、押上駅で東京メトロ半蔵門線と乗り入れ
※半蔵門線を経て更に東急田園都市線と直通。
西武鉄道
有楽町線・池袋線・狭山線:小竹向原駅で東京メトロ有楽町線・副都心線と乗り入れ
※一部は副都心線を経て更に東急東横線及び横浜高速鉄道とも直通。
秩父線:御花畑駅で秩父鉄道線と乗り入れ
京成電鉄
押上線:押上駅で都営地下鉄浅草線と乗り入れ
※一部は浅草線を経て更に京急電鉄とも直通。
本線:京成高砂駅で北総線と乗り入れ
成田空港線:印旛日本医大駅で北総線と乗り入れ
※京成高砂駅から北総線に入り印旛日本医大駅で再び京成線に入る運行もあり。また北総線から上記した都営地下鉄浅草線・京急電鉄への直通もあり。
千葉線・千原線:京成津田沼駅で新京成線と乗り入れ
東成田線:東成田駅で芝山鉄道線と乗り入れ
京王電鉄
京王線:新宿駅で都営地下鉄新宿線と乗り入れ
小田急電鉄
小田原線・多摩線:代々木上原駅で東京メトロ千代田線と乗り入れ
※一部は千代田線を経て更にJR常磐線とも直通。
東急電鉄
東横線:横浜駅で横浜高速鉄道と乗り入れ、渋谷駅で東京メトロ副都心線と乗り入れ
※一部は副都心線を経て更に東武鉄道や西武鉄道とも直通。詳細は東武、西武の項目を参照のこと。
目黒線:目黒駅で東京メトロ南北線、都営地下鉄三田線と乗り入れ
※南北線を経て更に埼玉高速鉄道線とも直通。
田園都市線:渋谷駅で東京メトロ半蔵門線と乗り入れ
※半蔵門線を経て更に東武鉄道と直通。
京浜急行電鉄
本線・空港線:泉岳寺駅で都営地下鉄浅草線と乗り入れ
※浅草線を経て更に京成線、北総線と直通。
東京地下鉄(東京メトロ)
有楽町線:小竹向原駅で西武有楽町線・池袋線・狭山線と乗り入れ、和光駅で東武東上線と乗り入れ
副都心線:小竹向原駅で西武有楽町線・池袋線・狭山線と乗り入れ、和光駅で東武東上線と乗り入れ、渋谷駅で東急東横線と乗り入れ
※東武、西武から副都心線を経て東急及び横浜高速鉄道への直通運転あり。
日比谷線:北千住駅で東武伊勢崎線・日光線と乗り入れ
東西線:中野駅でJR東日本中央本線、西船橋駅でJR東日本総武本線と乗り入れ、西船橋駅で東葉高速鉄道線と乗り入れ
※中央本線から東西線を経ての総武本線への直通運転、中央本線から東西線を経ての東葉高速鉄道への直通運転あり。
南北線:目黒駅で東急目黒線と乗り入れ、赤羽岩淵駅で埼玉高速鉄道線と乗り入れ
※東急から南北線を経て埼玉高速鉄道線への直通運転あり。
半蔵門線:渋谷駅で東急田園都市線と乗り入れ、押上駅で東武伊勢崎線・日光線と乗り入れ
※東急から半蔵門線を経て東武への直通運転あり。
千代田線:代々木上原駅で小田急小田原線・多摩線と乗り入れ、綾瀬駅JR東日本常磐線と乗り入れ
※小田急から千代田線を経て常磐線への直通運転あり。
相模鉄道
本線・JR直通線(西谷駅から本線と分岐):羽沢横浜国大駅でJR東日本東海道貨物線・横須賀線・埼京線にと乗り入れ
名古屋鉄道
犬山線:上小田井駅で名古屋市営地下鉄鶴舞線と乗り入れ
豊田線・三河線:赤池駅で名古屋市営地下鉄鶴舞線と乗り入れ
※犬山線、鶴舞線、豊田線・三河線を一気に繋ぐ相互運転もある様子。
小牧線:上飯田駅で名古屋市営地下鉄上飯田線と乗り入れ
近畿日本鉄道
奈良線:大阪難波駅で阪神なんば線・本線と乗り入れ
けいはんな線:長田駅でOsaka Metro中央線と乗り入れ
京都線:竹田駅で京都市営地下鉄烏丸線と乗り入れ
南海電気鉄道
高野線:中百舌鳥駅で泉北高速鉄道線と乗り入れ
京阪電気鉄道
京津線:御陵駅で京都市営地下鉄東西線と乗り入れ
阪急電鉄
千里線・京都線:天神橋筋六丁目駅でOsaka Metro堺筋線に乗り入れ
宝塚線:川西能勢口駅で能勢電鉄に乗り入れ
神戸線・神戸高速線:1998年まで三宮駅から神戸高速鉄道東西線(現在の阪急・阪神神戸高速線)に乗り入れ、更に山陽電気鉄道本線へと相互直通。なお、現在も山陽電気鉄道本線から一部列車が阪神神戸高速線を経て新開地駅より阪急神戸高速線に入り神戸三宮駅(阪急)まで運行。
※この件については、特殊事情があり少しややこしいです。詳細は後述。
阪神電気鉄道
本線・神戸高速線:西代駅で山陽電気鉄道本線と乗り入れ
※特殊事情あり、後述。
本線・なんば線:大阪難波駅で近鉄奈良線と乗り入れ
西日本鉄道
相互直通運転区間なし
なお、上で挙げた以外に新京成電鉄、山陽電気鉄道、泉北高速鉄道、北大阪急行電鉄、神戸高速鉄道を準大手と呼称するそうです。なお、厳密には純粋な民営だけでなく第三セクターも入っています。これらの相互直通運転についてもついでに述べておきます。特に、神戸高速鉄道は上でチラリと触れた「特殊事情」を語る上で外せませんから。
新京成電鉄
京成津田沼駅で京成線と乗り入れ
山陽電気鉄道
本線:西代駅で阪神電気鉄道神戸高速線・本線と乗り入れ
※特殊事情あり、後述。
※一部は阪神神戸高速線を経て阪急神戸高速線の線路に入り神戸三宮駅(阪急)まで運行している。
かつて、阪急電鉄神戸線とも神戸高速鉄道東西線を経て相互直通運転していた。詳細は後述。
泉北高速鉄道
中百舌鳥駅で南海電気鉄道高野線と乗り入れ
北大阪急行電鉄
江坂駅でOsaka Metro御堂筋線と乗り入れ
神戸高速鉄道
ここは、少しややこしいです。この会社は、第三種鉄道事業者(路線保有のみの事業者)として山陽電気鉄道(以下、山陽)西代駅(※)から阪神電気鉄道(以下、阪神)元町駅、高速神戸駅から阪急電鉄(以下、阪急)神戸三宮駅、新開地駅から神戸電鉄(以下、神鉄)湊川駅までの線路とその間の駅など施設を保有。管理は阪急・阪神・神鉄が第二種鉄道事業者(車両運行に専念する事業者)として共同で行なっている状況。西代駅から元町駅(阪神)までを阪神神戸高速線、新開地駅から神戸三宮駅(阪急)までを阪急神戸高速線、新開地駅から湊川駅(神鉄)までを神鉄神戸高速線と称しています。なお、高速神戸駅から新開地駅までは阪神・阪急重複区間ですが駅管理は阪神だとか。この形になったのは2010年から。それまでは神戸高速鉄道が駅運営・線路保守を行い、阪神・阪急車両の走行区間を神戸高速鉄道東西線、神鉄車両の走行区間を神戸高速鉄道南北線と呼んでいました。ただし、神戸高速鉄道は当初から独自の車両や乗務員を持っていなかったとか。この辺りの特殊事情や変遷が、話を複雑にしているようです。
上述した阪神と山陽の相互直通運転も、神戸高速鉄道が管理する施設を介しています。
1968年から1998年までは、阪神からは山陽の須磨浦公園駅まで、山陽からは阪神の大石駅まで。1998年からは、山陽姫路駅と梅田駅という双方のターミナル同士直通運転がなされるように。2010年以前は神戸高速鉄道東西線を介しての相互直通運転。山陽と神戸高速鉄道の境界は西代駅、神戸高速鉄道と阪神の境界は元町駅という形でした。
なお、上述したように1968年から1998年までは阪急と山陽の間で神戸高速鉄道東西線を介した相互直通運転がなされていました。阪急からは山陽の須磨浦公園駅まで、山陽からは阪急の六甲駅まで。阪急電鉄と神戸高速鉄道の境界は三宮駅、神戸高速鉄道と山陽電気鉄道の境界は西代駅。阪神からの直通運転が山陽姫路駅まで及んだのを受けて廃止されています。ただし、現在でも山陽から阪神・阪急の神戸高速線を経て神戸三宮駅(阪急)まで運行あり。
あと、余談。2019年12月時点で北神急行電鉄の施設保有も神戸高速鉄道です。北神急行電鉄北神線は新神戸駅で神戸市営地下鉄西神・山手線に乗り入れ。なお、2020年6月1日付で北神急行電鉄は地下鉄と運営一体化の予定だそうで。
※西代駅は、現在は山陽と阪神の共同駅。管理は山陽です。
関連サイト:
「東洋経済オンライン」(https://toyokeizai.net)より
「知られざる大動脈「神戸高速線」はどう変わる」(https://toyokeizai.net/articles/-/192480)
「楽しいむーさん一家」(http://www.blog-sanyo-railway.com/sanyo-005/)より
「【発掘】山陽電車に乗り入れる阪急電車」(http://www.blog-sanyo-railway.com/sanyo-005/2015/02/18/)
「神戸新聞NEXT」(https://www.kobe-np.co.jp)より
「北神急行、来年6月市営化 神戸市が神鉄に運行委託へ」(https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201910/0012776375.shtml)
ここで挙がった大手私鉄・準大手私鉄は、西日本鉄道以外は相互直通運転と縁があると言えるでしょう。神戸高速鉄道も、他社路線同士の相互直通運転前提な存在ですし。
西日本鉄道も、貝塚線と福岡市営地下鉄箱崎線の相互乗り入れを検討はしているそうですし、大手私鉄・準大手私鉄が走行する大都市圏となると乗り換えなしで直通できる利便性が求められるという事でしょうか。
関連サイト:
「日本経済新聞」(https://www.nikkei.com)より
「福岡地下鉄・西鉄の直通運転 235億円」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38095920S8A121C1LX0000/)
一方、JRと大手私鉄が絡んだ相互直通運転があるのは関東圏のみ。更に、三つ以上の鉄道会社が絡んでの直通運転も珍しくないようで、かなり複雑。人口の巨大さが頭抜けているだけに、直通運転範囲や利便性を求められる度合が、それだけ大きいという要素もあるんでしょうね。
ふと気になって軽く調べただけなのですが、結構な分量に。なかなか混み入った事情があったりするものなのですな。
【参考文献】
上記したサイト以外に
中村恵二『図解入門業界研究最新運輸業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』秀和システム
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
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